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最後の手紙
最后一封信
それはほんのわずかな瞬間だったような気がする。
はっと意識を取り戻した僕の前に、あの少女が立っていて、「こっちよ。」と言いながら歩き出した。
当我猛地回过神，那名少女已经站在我面前，轻声说了句“这边”，便转身向前走去。
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確かについ先ほどまでは刑務所の前にいた。
ところが、いつの間にか木々に囲まれた墓地の前にいた。
可不知何时，竟已身处一片林木环绕的墓地前。
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兄は墓参りをしているのかと思って、少女の後を追った。
心想或许是哥哥来扫墓了，我便跟上了少女的脚步。
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僕の声には耳を貸さず、少女はどんどん奥の方へと足を進め、ある墓石の前で止まった。
少女根本不理会我，一个劲儿地往里面走，最终停在了一块墓碑前。
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「ここよ。」という少女の言葉に僕は戸惑った。
“就是这里。”少女的话让我感到迷惑。
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両親の眠る墓かもしれないと思ったが、その前には誰もいない。
我想这可能是父母的墓，但墓碑前空无一人。
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苛立つ僕に少女は「お兄さんもここにいるの。」と言った。
我开始急躁起来，少女便对我说：“你的哥哥就在这里。”
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墓石にすがりつき、目をよく凝らすと、確かに父と母の名前が刻まれていた。
我扶着墓碑仔细地看，上面确实刻着父亲和母亲的名字。
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そして、その横に並ぶ兄の名前を見つけた時、僕は愕然として膝を落とした。
然而，当我在旁边也看到了哥哥的名字时，一阵愕然袭来，令我瘫软跪倒在地。
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「なぜ、なぜなんだよ……どうして、兄貴まで死ななきゃならないんだよ。」
“为什么，怎么会这样……为什么连哥哥也非死不可啊。”
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少女望着茫然失措的我，轻声说道：
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「お兄さんはお母さんを看病しながら一生懸命働いたの。
“你哥哥一边照顾生病的母亲一边努力工作。
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でも、無理をしすぎちゃって体を壊した。
可终究是劳累过度，拖垮了身体。
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即便这样，他仍然没有停止寻找你。
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お母さんがなくなった後、たった一人の肉親だからって言って。
他说，你是母亲过世后，他在这世上唯一的亲人了。
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终于，在那个晚上，他找到了你。”
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少女の言葉にあの夜の出来事が一瞬にして蘇った。
少女的话让我想起了那天晚上发生的事。
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僕の名前を叫び続ける兄の声が頭の中を駆け巡る。
哥哥一声声呼唤我名字的声音，在脑海中不断回响。
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その声から逃げ出した自分に対する後悔の念と絶望感に、胸が張り裂けそうになった。
从那个声音中逃离的后悔和绝望感汹涌袭来，让我撕心裂肺。
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僕は叫びながら、のたうち回るように墓の前で転げまわった。
我嘶吼着，在墓前痛苦地翻滚挣扎。
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兄を殺したのは僕だ、母だけでなく、兄さえも……
是我害死了哥哥，不光是母亲，就连哥哥也……
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“哇啊啊啊啊啊啊啊啊——！！！”
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地面に何度も頭を打ち付けた、血がとくとく流れ出すのも構わずに。
我不断以头抢地，丝毫不顾头破血流。
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そのままうずくまっていた僕はあることを思いたって、ふらりと立ち上がった。
痛苦中蜷缩在地的我，忽然想到什么，摇晃着站起身。
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みんなが死んで、こんなろくでなしが生きている道理はない。
大家都死了，像我这样的废物还有什么活下去的理由。
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不意に少女が「死ぬの？」と言った。
突然，少女开口问道：“要死吗？”
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“那是我的自由，别再管我了。”
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すると少女は一通の封筒を差し出した。
僕はあっと息を呑むと、急いで封を切り、震える手で手紙を読んだ。
我倒吸了一口气，急忙拆开信封，用颤抖的手拿着信读了起来。
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お前の出所の日までは頑張ろうと思ったが、どうやら間に合いそうもない。
本来想撑到你出狱的那天，看来是来不及了。
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恐らくこれが最後の手紙になると思う。
这应该是我给你写的最后一封信了。
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少し無理をしすぎたせいかもしれない、直接会って話したかったが、お前は面会に応じてくれなかったしな。
也许是我太勉强自己了吧，本想当面和你谈谈，但你始终不愿见我。
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お前にはいつも辛い思いをさせてきてすまなかった。
一直以来让你承受了太多痛苦，对不起。
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その償いもせず、そしてお前を一人にしていく俺も許してくれ。
没能弥补你什么，却还要先一步离开，请你原谅我。
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ただ、俺の分まで精一杯生きてほしい。
只希望你能连同我的那份，努力活下去。
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あと、父さんと母さんのことも許してやってくれ。
口では何を言っても、それは全部お前のためだと信じていたからなんだ。
不管他们嘴上说什么，我相信他们都是为你着想。
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それと、最後にひとつ、お前はまだ自分のことがわかっていない。
以及，最后一点，就是你还不了解自己。
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お前には十分な可能性と未来がある。それを忘れるな。
你还有无限的可能性和美好的未来，这一点，我希望你不要忘记。
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頑張ればできると信じている、俺のたった一人の肉親だから。
我相信，你只要努力就能做到，你可是我唯一的亲人啊。
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いつでも見守っている、絶対に幸せになれ。
我会永远守护着你，绝对要幸福啊。
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すると封筒の中から、するりと何かが落ちた。
这时，有什么东西从信封里掉了出来。
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慌てて拾い上げると、それは僕名義の預金通帳だった。
我慌忙地捡起来，发现那是用我的名字开户的存折。
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震える手で通帳を開くと、印字してある数字にぎょっとした。
我用颤抖的双手打开存折，被上面印着的数字吓了一跳。
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我不由自主地抱住墓碑，失声痛哭。
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「なんだよ……どうしてだよ……どうしてこの金を自分のために使わなかったんだよ……
“什么啊……为什么……为什么自己不用这些钱啊……
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俺みたいなクズのために残したって、意味ねえよ……なんでそうやっていつも自分を犠牲にするんだ？俺みたいな……俺みたいな奴のために……」
留给我这样的人渣，没有任何意义啊……为什么总是牺牲自己啊，为我这样的人……为我……”
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声がうわずって、それでも声を振り絞って泣いた。
声音早已嘶哑，但我依旧像要发泄什么似的，用尽全身力气哭喊着。
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“哥哥……啊啊啊啊啊啊啊啊——”
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つづく🖌
选自丨続・ふしぎ工房症候群
EPISODE 4「兄からの手紙」
第八篇传送门
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